闇に溺れた天使にキスを。






一応医者に診てもらったけれど、幸い神経に傷がつくことや後遺症が残る恐れもないようで安心した。

もし泡を吹いて気絶などしていたら、どうなっていたかわからなかったようで。



「今日は安静にするため、入院しておくのが望ましいけど……親が心配するかな?」


医者にそう聞かれた私は返事に戸惑ってしまったけれど、絞められた部分は赤くなっており、親やお兄ちゃんにバレると面倒なことになると思った。


そのため今回は親にも友達と泊まると嘘をつき、1日だけ病院で過ごすことにした。



それから医者は『何かあったら呼んでください』とだけ言い残し、病室を後にして。

残されたのは上半身を起こす私と、ベッドのすぐそばに置いてある簡易の椅子に座る涼雅くんふたりだった。


先ほどよりも雨がひどくなっているようで、雨の音が窓を閉めていても聞こえてきた。



「……異常なくて良かったな」

そんな中、静かな病室で涼雅くんの声がよく響き。



「うん……あの、助けてくれてありがとう」
「は?何言ってんだよ。こっちが謝るべきだろ」

「どうして…?」
「お前のこと守れなかったから」


その時、スッと涼雅くんの手が伸びてきた。

途端に首を絞められた時のことを思い出してしまい、肩がビクッと跳ねる。


怖い───


そう思った私は目をぎゅっと閉じたけれど、彼の指が私の目元にそっと触れただけで安心する。


「まぶた、赤くなってる」
「え……」

「やっぱ触れられるの、怖いよな」
「う、ううん…ごめんね、つい反射で…」


恐る恐る目を開けると、優しい眼差しを向けられいた。


「簡単に恐怖心は消えねぇよ。
慣れるまで時間がかかるだろうし」


今度は頭を撫でられ、恐怖心が嘘のようになくなった。

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