闇に溺れた天使にキスを。
*
頭に重みが感じる。
それも優しくて温かい。
「……ん」
それを確かめるように、ゆっくりと目を開ければ───
「……起きた?」
つい先ほどまで聞いていた声が耳に届いて、一気に現実へと引き戻される。
「……へ」
真っ先に視界に映ったのは、見慣れない天井。
背中からは柔らかな感触が伝わり、ここが保健室のベッドであることがわかった。
確か私、神田くんにしがみつく形で意識を失ってしまったんだ。
慌てて横に顔を向けると、ベッドのすぐそばに置いてある椅子に座り、私の頭を撫でる神田くんの姿が目に入る。
その表情は穏やかではないけれど、先ほどのような冷たさはなく。
「神田く…」
思い出す、意識を失うまでの記憶。
怖くなって、私の頭を撫でる手から逃げるようにして起き上がった。
「……まだ寝とかないとダメだよ」
けれど神田くんの口から出た言葉は、私を気遣うようなもので。
「貧血だって。
こんなに痩せて、ちゃんとご飯食べてるの?」
「……っ」
「どうせなら幸せ太りでもしておけば良かったのに。
それなら気兼ねなくめちゃくちゃにできる」
静かな声音。
やっぱり神田くんは今もまだ怒っている。
「だから白野さんに選ばせてあげる。俺に優しくされたいか、乱暴に扱われたいか。どっち?」
「え……」
神田くんは私の頬に手を添えて、じっと見つめてくる。
その瞳はどこか怖く、逸らしたくなるけれど。
「……私、は」
答えは決まっているから。
そんなの、悩むことなんてない。