闇に溺れた天使にキスを。






頭に重みが感じる。
それも優しくて温かい。


「……ん」

それを確かめるように、ゆっくりと目を開ければ───



「……起きた?」

つい先ほどまで聞いていた声が耳に届いて、一気に現実へと引き戻される。


「……へ」


真っ先に視界に映ったのは、見慣れない天井。

背中からは柔らかな感触が伝わり、ここが保健室のベッドであることがわかった。


確か私、神田くんにしがみつく形で意識を失ってしまったんだ。


慌てて横に顔を向けると、ベッドのすぐそばに置いてある椅子に座り、私の頭を撫でる神田くんの姿が目に入る。

その表情は穏やかではないけれど、先ほどのような冷たさはなく。


「神田く…」

思い出す、意識を失うまでの記憶。


怖くなって、私の頭を撫でる手から逃げるようにして起き上がった。



「……まだ寝とかないとダメだよ」


けれど神田くんの口から出た言葉は、私を気遣うようなもので。



「貧血だって。
こんなに痩せて、ちゃんとご飯食べてるの?」

「……っ」

「どうせなら幸せ太りでもしておけば良かったのに。
それなら気兼ねなくめちゃくちゃにできる」


静かな声音。
やっぱり神田くんは今もまだ怒っている。


「だから白野さんに選ばせてあげる。俺に優しくされたいか、乱暴に扱われたいか。どっち?」

「え……」


神田くんは私の頬に手を添えて、じっと見つめてくる。

その瞳はどこか怖く、逸らしたくなるけれど。



「……私、は」


答えは決まっているから。
そんなの、悩むことなんてない。

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