闇に溺れた天使にキスを。



「ありがとう、沙月ちゃん。
行ってくる…!」


どうしても心配だったから、私は保健室に行くことにした。

けれど、いざ保健室の前に立つとどうすればいいのかわからなくて。

数分ほどドアの前で突っ立っていた私。


大きく深呼吸をして、ドアに手をかける。
勢いでいかないとダメだと思ったから。

思い切って保健室のドアを開けた。
もちろん静かに、なるべく大きな音を立てないよう。


「…………」

中はひどく静かで、思わず息を止める。

入ってすぐにあるソファには誰もおらず、保健室の先生もいなかった。


そしてゆっくりベッドのほうに視線を向ける。
するとそこには…。


「……っ」

背中をこちらに向けて、ベッドに腰をおろしている神田くんの姿があった。

しかも上半身裸で、筋肉質な背中が見える。
思わず目を逸らそうとしたけれど───

< 55 / 530 >

この作品をシェア

pagetop