耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
白猫を追いかけ、細い道を走る。美寧に追われた猫は、路地の奥へ奥へとスルスルと潜り抜けながら走っていく。
その後姿をしばらく追っていたが、とうとうどこに行ったのか分からなくなってしまった。
「はぁはぁっ……」
猫の姿を見失ってしまった美寧は、立ち止まり荒い息をつく。額に汗が滲んだ。
(久々にこんなに走ったかも……)
ここ二週間ずっと怜の家に籠りっきりの生活を送っていた美寧には、ほんの数分走っただけでもきつい。
大通りから外れた路地にはアーケードはない。美寧の肌を初夏の陽射しが容赦なく照りつけた。
(あ……くらくらする)
立ち止まった瞬間噴き出した汗が額を伝う。暑いはずなのに寒気がした。
足元がふわふわとして立っていられず、その場にしゃがみ込んでなんとかやり過ごそうとするが、視界が揺れ段々と気分が悪くなってきた。
(せめて日陰に……)
このまま太陽の下にいるのは良くないと本能的に悟って、どこか日陰に入らなければと思うが、太陽が真上近くまでのぼりかけている今、影は短い。しかも立ち並ぶ店の裏手側なので、軒下もほとんどなかった。
(だれか……)
助けを呼ぼうにも運悪く誰もいない。携帯電話などは端から持っていないし、もしあったとしても掛ける相手もいない。この街には知り合いと呼べる人はいないし、唯一頼ることが出来る人は、今は離れた場所で仕事中だ。
そうしているうちに本格的に具合が悪くなってしまった美寧は、道端に座り込んだまま動けなくなってしまった。