耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
「具合はどうだ?」
「はい。ずいぶん良くなりました。」
「そうか。それは良かった。」
マスターは、垂れ気味の瞳を細めながらホッと肩を撫で下ろした。目尻が下がっていてとても優しげに見える。
「助けて頂いてありがとうございます。」
「いや、元気になったならなによりだ。たまたま俺が通りかかったら良いものの、あのままあそこで行き倒れていたら、本当に熱中症になっていたぞ。」
「はい……ご迷惑をおかけして、すみませんでした。」
「迷惑ではないが、次は気を付けるように。」
「はい。」
シュンと項垂れた美寧の頭を、マスターがポンポンと軽く叩く。
「分かればいいんだ。」
優しい声に顔を上げると、彼は目尻を下げて微笑んでいる。自分の失態に落ち込んでしまうが、マスターの優しい微笑みで少しだけ気分が上向きになった。
「顔色もずいぶんと良くなったな。」
出会ってまだ数時間しか経たない美寧のことを、マスターはずいぶん親身になって心配してくれる。
「良かったらコーヒーでも飲んでいくか?嫌いじゃなければ、だが。」
「いいんですか?」
目を輝かせた美寧に、マスターは微笑みながら「病み上がりだからカフェオレだけどな」と言ってカウンターの中に入っていった。