耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
しばらくすると、丸いトレイを持ったマスターが美寧のところに戻ってきた。
トレイの上のカフェオレボウルを美寧の前に置くと、ソファーに腰を下ろしたマスターは自分の前にマグカップを置いた。
「冷めないうちにどうぞ。」
「ありがとうございます。いただきます。」
淹れたてのコーヒーのいい匂いが鼻をくすぐる。美寧はカフェオレボウルに口を付けた。
「美味しいっ!」
コーヒーのコクはそのままに、えぐみの一切ない苦みがミルクと合わさってとてもマイルドになっている。温かいカフェオレは、さっきまで冷たいもので体を冷やしていた美寧にちょうど良かった。
「今まで飲んだカフェオレのなかで一番美味しいです。」
そう言うと、マスターは眉を少し上げて、「そうか、それは良かった。」と笑った。
「華やかな香りはグアテマラでしょうか……でもマンデリンみたいな独特な風味もあるような……」
「―――すごいな。」
美寧の呟きにマスターが驚きの声を上げた。
「どちらも正解だ。カフェオレ用にブレンドしたもので、そのどちらの豆も入ってるよ。なかなかの舌を持っているな。常連さんでもそこまで分かる人はいないぞ。」
賞賛の声に美寧は少し気恥ずかしくなり、「えへへ」と照れ笑いをする。
「一緒に暮らしていた祖父がコーヒー好きで、色々な豆やブレンドを取り寄せて飲んだり、コーヒー専門のカフェに行ったりしていたんです。その影響でコーヒーには少しだけ詳しくなりました。」
「なるほど。」
マスターは顎に手を当て頷いた。