耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー


昼下がりから夕方にかけてのピークの時間をなんとか無事乗り切ってホッと一息ついた頃、マスターが「ひと休憩しなさい」と言って、美寧をカウンターの一番端に座らせた。働きだしたその日からマスターは美寧の体調を気遣ってくれて、こうして余裕がある時に休憩を取らせてくれる。

椅子に腰を下ろすと、どっと疲れを感じる。今日はいつもよりも勤務時間が長い上にピーク時間が長かったせいだ。
ふぅっと長い息をついた美寧の前に、コトリとカップが置かれた。カフェオレだ。

「おいしい……」

美寧の口からこぼれ落ちる言葉に、カウンターの中のマスターが静かに微笑む。

「マスター。」

「なんだ?」

「私もお使いの帰りに、あの時のこと思い出してたんですよ。」

「あの時?」

「マスターと初めて会った時のことです。」

「ああ。行き倒れ事件か。」

「うっ、それは言わないでください。」

「はははっ、すまんすまん。」
< 126 / 353 >

この作品をシェア

pagetop