耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
昼下がりから夕方にかけてのピークの時間をなんとか無事乗り切ってホッと一息ついた頃、マスターが「ひと休憩しなさい」と言って、美寧をカウンターの一番端に座らせた。働きだしたその日からマスターは美寧の体調を気遣ってくれて、こうして余裕がある時に休憩を取らせてくれる。
椅子に腰を下ろすと、どっと疲れを感じる。今日はいつもよりも勤務時間が長い上にピーク時間が長かったせいだ。
ふぅっと長い息をついた美寧の前に、コトリとカップが置かれた。カフェオレだ。
「おいしい……」
美寧の口からこぼれ落ちる言葉に、カウンターの中のマスターが静かに微笑む。
「マスター。」
「なんだ?」
「私もお使いの帰りに、あの時のこと思い出してたんですよ。」
「あの時?」
「マスターと初めて会った時のことです。」
「ああ。行き倒れ事件か。」
「うっ、それは言わないでください。」
「はははっ、すまんすまん。」