耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
***


「ユズキだろう?」

あれからすぐに怜は彼を家の中へ招き入れた。
「手土産だ」と言って手に持っていたものを紙袋ごと怜に渡した彼は、慣れた足取りでキッチンとダイニングの間のガラス障子を引いて部屋に入り、ソファーの前に腰を下ろした。


怜の問いかけに、ナギと呼ばれた男性は飲みかけのコーヒーカップをローテーブルのソーサーの上に戻し、視線を上げた。

「何が?」

「俺がミネと住んでいることをお前に言ったのは」

「ああ、それか――まあな」

「ったく、ユズキは本当に……」

ユズキは怜の大学からの友人で、美寧の主治医でもある。眉をかすかに寄せて迷惑そうに呟いた怜は、視線を感じて隣を見た。

「どうかしましたか?ミネ」

ローテーブルの下に敷かれたラグの上に座っている怜は、隣に座る美寧を見て首を傾げる。美寧は少し躊躇ったあと、怜に訊ねた。

「今日のお客様って……」

「ええ、彼のことですよ?ナギが来ると言いませんでしたか?」

「えっと…お友達が来るとは聞いたよ?でもナギさんって、女の人だと思ってた……」

言いながら美寧は、昨日の晩、『明日の夕方ナギが来ます』と怜から告げられた時のことを思い返した。
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