耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
以前ユズキからその名を聞いた時、すっかり“ナギ”が女性だと思い込んでいた美寧は、怜と仲の良い女性が来ることに密かに緊張していたのだ。自分がバイトから帰る前にその人がやってきたら、彼女と怜が二人きりになってしまう。なぜだかそのことがとても気になって、バイト中もそわそわしていた。そしてバイトが終わってすぐに、飛び出すようにラプワールを後にしたのだった。

「そうだったのですか?…すみません、俺としたことがうっかりしていて、ナギのことをちゃんと紹介できていませんでしたね。彼は俺の大学の時の友人で、」

「高柳滉太だ」

客人は怜の紹介の言葉を途中から引き受けるように自分の名前を名乗った。

「はじめまして。美寧…とっ、……き、杵島(きじま)美寧です」

美寧がそう名乗ると、奥二重の瞳がじっと美寧を見つめてくる。
真っ直ぐな視線を無言で向けられて、美寧は隣の怜の方に無意識に体を寄せた。

「……俺は君とどこかで会ったことがあるだろうか?」

「っ、」

ピクリと美寧の背が跳ねる。
気付いたら怜のシャツの裾をギュッと握りしめていた。

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