耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
「ん、」

唇同士をしっとりと重ね合わせた後喰むように下唇を挟まれて、背中に甘いしびれが走る。思わず甘い吐息が漏れそうになるのを、両手で包むように持っていた紅茶の缶に力を込めることでなんとか堪えた。

ガラス障子一枚を隔てた向こうの部屋には高柳がいるというのに、怜はなかなか美寧を離そうとしない。いつのまにか怜の片手は美寧の腰、もう一方は首の後ろに回されていて、離れようと身を捩じらせると反対に引き寄せられて密着してしまう。

長い口づけに息苦しくなり、美寧が酸素を求めて薄く口を開いたのを狙ったかのように、口蓋から舌が差し込まれた―――その時

「焦げるぞ」

美寧が本物の猫だったら一メートルくらいは飛び上がっていたかもしれない。
それくらいに驚いた美寧とは逆に、怜は何事も無く振り返った。

「――ナギ」

「邪魔をして悪いが、アヒージョがそろそろ焦げそうだ」

「了解。すぐ行く」

飄々とした様子の怜に高柳はふぅっと短く息をつくと、ちらりと視線を下にずらした。目が合った美寧は固まる。

「ミニケーキは皿に上げておいたぞ」

美寧は自分に向けて言われた言葉に、まばたきを二度ほどしてから

「あ、ありがとう…ございます……」

真っ赤な顔のまま小さくお礼を言った。

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