耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
どれくらいそうしていたのだろうか。
腫れぼったい瞼をゆっくりと持ち上げる。目の前の紺色のシャツがぐっしょりと濡れて色を変えている。

「ごめん……なさい……」

小さく謝ると、背中を撫でていた手がピタリと動きを止める。

「何も言わなくて……甘えてばっかりで……」

硬い胸に額を付けたままそう言うと、ぎゅっと痛いくらい強く抱きしめられた。

「構いません……謝らないで、ミネ。言いたくないことは、言わなくてもいいのです」

怜の言葉に美寧は(かぶり)を振る。
そうやって彼の言葉に甘えたままでいたら、美寧はきっと自分が嫌いになる。誰の役にも立たない、甘えてばかりの自分が。

「俺は、あなたが何者でも構わない。『何の役にも立たない』なんて言わないで」

美寧の気持ちを読んだような怜の台詞に、美寧は思わず顔を上げた。
瞳がぶつかり合う。切れ長の瞳がまっすぐに美寧を見つめる。
出会った時から変わらない怜の瞳。吸い込まれそうなほど美しいその瞳を、美寧はただじっと見上げた。

「俺にはあなたが必要なんだ。美寧」

降ってきた言葉に、美寧の瞳から涙のしずくがこぼれ落ちた。



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