耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
長い指が持ち上げたスマホを目で追うと、怜と目が合う。

「スマホ、……なんで?」

操作途中だったのに、と頬を膨らませた美寧。
怜は美寧のスマホを持ったままあっさりその答えを告げた。

「あなたが自分で名乗ったのですよ?『ma minette』と」

「えっ!?」

思いも寄らぬことを言われ目を丸くする美寧に、怜は続ける。

「あの時……公園で倒れていたあなたに名前を聞いた時言ったのです、『ma minette』と」

「………」

美寧はその時のことをよく覚えていない。目が覚めたら布団の上だった。いったい自分がどうしてあの紫陽花の茂みで倒れてしまったのか、その時のこともうろ覚えだ。

「そ、そうだったんだ……」

多分、熱で朦朧とした頭と呂律の回らない舌で言った名前が《《そう》》聞こえたのかもしれない。

(でも、奥さんが言ってたこともちょっと気になるし……)

「れいちゃん。スマホ、いい?もうちょっと調べたいことがあるの」

怜の手の中にあるスマホに手を伸ばす。
―――が、その手を反対に怜に掴まれた。

「れいちゃん?」

顔を上げると思ったより近くに怜の顔があった。
怜の向こう側から照らすフロアスタンドの光で、彼の表情が良く見えない。
逆光に目を(すが)めた時、囁くように怜が言った。

「《《これ》》よりも、俺の相手をしてください」

怜の唇が美寧の物に重なった。

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