耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
「体が辛い、ですか?」
美寧は、今度は少し間を置いてから、小さく頷いた。
「それならならなおのこと食べた方がいいです。食べないと薬も飲めませんし元気にもなれません。元気になれないと家に帰れませんよ?」
怜にそう説かれると、美寧は悲しそうに眉を下げ俯いてしまった。まるで元気になんてなりたくないような顔をしている。
怜は内心で溜め息をついた。
(困った子猫ちゃんですね…どうしたら食べてくれるのでしょうか。)
怜が思案に暮れていると、俯いていた美寧が何か小さな声で喋った。
「…も、……いの…」
「え?」
「もう、ないの…元気になっても……帰るところなんて……」
か細い声でそう言った彼女は、肩を小さく震わせると、匙を椀の中に返してしまった。
俯いた顔は長い髪に隠れ、その表情は怜には見えない。ただ、小さな体をさらに小さくして俯いているその姿は、弱った小動物のようでひどく痛ましい。
怜の体が自然と動く。怜は美寧の椀を彼女の手ごと包み込んだ。
小さな手がピクリと跳ねるのが伝わったけれど、怜は気にせずその体勢のまま口を開いた。
「帰るところがないならここに居ればいい。」
その台詞に美寧が顔を上げる。その瞳は思った通り潤んでいる。
「俺は拾ったものを無責任に放り出したりしない。貴女が『もう大丈夫』と思えるようになるまでここに居たらいい。」