耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー

真剣な顔でそう言われ、美寧は目を丸くした。

初めて会った見ず知らずの自分にそんなことを言う彼は、いったいどんな人なのだろう。
この時初めて美寧は怜自身に興味を持ったのだ。

熱で朦朧としている美寧の頭の中は、これまでは自分が破ってしまった約束のことばかりが占めていた。だから彼がどんな人でどうして自分がここにいるのかを、考えようとも思わなかったのだ。

「私…どうして…、あなたは……?」

疑問を口にした美寧に、一瞬目を見開いた怜は次の瞬間、「くくっ」と肩を震わせ笑いを漏らした。

(あ、笑った。)

美寧が呑気にそんな感想を抱いていると、怜が笑った顔のまま話す。

「今頃ですか、その疑問……くくっ、面白い子ですね。」

そう言ってもう一度笑うと、怜は美寧を拾った経緯を話し出した。

「覚えていませんか?あなたは雨の公園で倒れていたのですよ。俺がたまたま気付いたから良かったものの、あのまま茂みの中で誰にも気付かれずに夜になっていたら、もっと大変なことになっていたかもしれません。」

怜の言葉に、美寧にその時の記憶が戻ってくる。

「私…ごめんなさい………」

自分の失態のせいでこの男性にとんでもなく迷惑を掛けた、いや、現在進行形で迷惑を掛けているのだと今更ながらに思い到って、美寧は申し訳なさでいっぱいになった。

「謝らなくていいのです。謝って貰っても、嬉しくなんてありません。」

怜の突き放すような言葉に、美寧は更に自分が情けなくなり、自然と俯きがちになる。
けれど、怜の次の言葉に動きを止めた。
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