耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
「元気になって、『ありがとう』と言って貰える方が何倍も嬉しいですよ、ミネ。」
彼の口から放たれた自分の名前が、ひどく優しいものに聞こえる。心の奥に何かじわりと温かなものが滲み込んで来た。
不思議に感覚に美寧が戸惑っていると、手の中から椀が抜き取られた。
「すっかり冷めてしまいましたね……」
怜は椀の中身を匙ですくいながら呟くと、土鍋の蓋を開ける。土鍋の中の雑炊は、まだ湯気を立てていた。怜は椀の中身をそれと入れ替えた。
湯気を立てた椀を持って美寧に向き直った怜は、今度は椀を美寧に差し出さず、その中からひと匙すくって「ふぅーっ」と息を吹きかける。
怜の一連の動作をただ目で追っていただけの美寧の目の前に、突然にその匙は突きつけられた。
目を丸くした美寧に、怜は言う。
「はい、口を開けて。」
戸惑う美寧は丸くした目を今度はしばたかせた。
「冷ましましたから大丈夫。ほら早く、落ちてしまう。」
少しでも動かしたらこぼれてしまいそうな雑炊が、匙の上に乗っている。反射的に口を開けた。すると、すかさず木の匙が口に入れられた。