耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
ゆっくりとパンケーキを切り分ける。かすかに手が震えて、ナイフが皿とぶつかり小さな音を立てた。
さっきまでは上手に乗せられたフルーツは、なぜかなかなかフォークの上に乗ってくれず、三度目に落ちたとき、美寧はそれを諦めた。
パンケーキだけが刺さったフォークを慎重に持ち上げ、怜の方に差し出した。
『はい、どうぞ。』
いつものように無邪気に笑顔でそう言うことがなぜか出来ない。
それがどうしてなのか、自分でも分からない。
怜の口元十センチところにあるパンケーキをただ見つめながら、黙って待つ。すぐに食べられると思っていたそれはなかなか無くならず、パンケーキに付いているメープルシロップが今にも垂れ落ちそうになっている。
「シロップ、落ち―――っ」
言いかけた時、美寧は手首に熱を感じ、そのままグッと引かれた。
ハッと目を見張った瞬間。
―――パクリ。
怜がフォークの先を口に含んだ。