転生令嬢は小食王子のお食事係
 何度も来ている私はともかく、王妃様もそこを通ってやってきたのだろう。でないとここまで来られない。
 王妃様はこの宮の主人なので、当然屋敷の構造は理解しているはずだし。
 それよりもなぜ王妃様がここにいるかが重要だ。
 悪いことをしているわけじゃないが、使用人の領域である厨房に出入りしているのは貴族令嬢としては少々外聞が悪い私としては、王妃様がここにいる状況はとてもマズかった。
 なにしろ私がこの王妃宮にいるのは、結婚相手を見つけるためだ。王妃様が相手を直接斡旋するわけじゃないが、王妃様の繋がりで知り合う相手になる。
 そのため、相手のことは王妃様の耳に入るだろうし、間接的に私の情報や噂は相手に流れる。
 だから、使用人に交ざって料理をしていることが王妃様にバレたら、安穏とした結婚生活を望んでいる私としては大きな痛手だった。
 どうしよう……! シラを切るか、それとも……
 私がどう切り抜けるか頭を悩ませていると「そう怯えないでちょうだい」と王妃様が呟いた。
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