転生令嬢は小食王子のお食事係








「よさそうですね! 取り出しましょう」
「はい!」
 エマは火かき棒を持つと、鉄板の縁に棒の先端を引っかけてうまい具合に手前に引く。そして、分厚いミトンを手にはめて鉄板を取り出した。
「はぁ、いい香り……!」
 手に持っているクッキーからふわりと香ばしい香りが立ち上るのだろう。
 うっとりとその匂いを胸いっぱいに吸い込んでいる。
「ふふ、堪能するのはいいですが、もうひとつも取り出してくださいな」
「はっ! そうでしたね!」
 クッキーをのせている鉄板はふたつある。もう片方はまだ薪釜の中だ。
 エマは私の言葉にハッとすると、鉄板を調理台に置き、ふたつ目の鉄板を取り出す。
「両方ともいい感じですね」
 私は二種類のクッキーを見て言った。
 ただ、クッキーは焼きたては食べられない。
 焼きたてのクッキーは、柔らかい。クッキー特有のサクッとした食感はある程度冷めてから生まれるのだ。
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