転生令嬢は小食王子のお食事係
ここの厨房に置いておいても、おそらくレオナール様はこちらに来るわけがないし。かといって執務室に置いておくのも、あまりよくない気がした。
正直、侍従長のノーマンがよくわからない。
レオナール様の味方なのか敵なのか。
侍従長は主人のお世話をして屋敷を統括する使用人だ。その人が〝第一王子派〟と繋がっている使用人をそのままにしている。
レオナール様はそんな使用人がいるということを把握しているようだが、ノーマンの立ち位置がどうなのかがわからない以上、レオナール様に食事を間接的に届けるというのはダメな気がした。
「どこでお会いになれるかわかりませんしねぇ。執務室に置いておいたら誰かが毒を盛る可能性もありますし」
エマから毒という言葉がするっと出てきて私はぎょっとする。
私の反応にエマは「王宮のキッチンメイドなら常識ですよ~」と軽く言った。
「陰謀渦巻く宮中では、毒の混入が昔から起こってます。なので料理に関わる使用人は自衛もしますし、毒の知識もある程度持っていることが採用の条件なんです」
「そうだったの……!」
「毒を入れた犯人として真っ先に疑われるのは料理人とキッチンメイドですからね。迷惑な話ですが、知識がないと知らずに入れてたなんてことも起きちゃいますし……。お給料はメイドの中でも高いほうですが、同時にリスクも高いポジションなんですよ、キッチンメイドって」
エマの話は正直驚きだった。
王宮では毒がごく近くにあること。それを知っていて、しかもしっかり意識していること。