転生令嬢は小食王子のお食事係
 なにより――。
「暇だ……」
 室内をただ眺めるのも飽きてきた。脳内でいろいろ想像することも尽きてしまった。
「これだけ本があるんだから、一冊くらい拝借してもいいよね」
 ぽつりと呟くと私の脳内のどこかから陽気な声で「いいよー!」と返ってきた気がして、私はソファから立ち上がる。
 立派な装丁の背表紙を一つひとつ眺め、面白そうな本がないか吟味する。
 こちらの世界で、本は高級品だ。元の世界でも限定版の画集やコアな資料などの高い本はあったが、こちらの本は比べものにならないくらい高い。
 特にこの部屋の本棚に収まっているようなきちんと装丁がされているものは特にだ。
 実家の父の書斎にはなかった本がたくさんあって、わくわくしてくる。前世の記憶があるからか、趣味としての読書を知っている身としては本も料理の次に気になる分野だ。
 さすがに料理の本はないと思うけれど、食材――植物の本があったら嬉しいな。
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