転生令嬢は小食王子のお食事係
 その時、顔を俯けるとテーブルに置かれたままのバスケットが視界に入った。
 せめてこのくらいは……!
「最後にひとつよろしいでしょうか?」
 まだなにかあるのかと言わんばかりに、こちらに視線をよこす第二王子にしっかりと向き合い、私はにっこりと笑みを浮かべた。
「こちらは手土産のフィナンシェですのでお茶請けにでもなさってください。お食事の時間もとれないほどお忙しいとお聞きしておりますので」
 食事がとれないのは忙しいからなのかなんなのかわからないけれど、「基本的に僕はいない」という言葉を拡大解釈して返した。
 王妃様は私の料理なら食べてくれるかもとこちらに送り出してくれたものの、この王子の反応を見ると、それ以前の問題だと思う。
 好きにしていいと言うのは、括弧書きで僕に関わらなければ、という注釈が入った言葉に聞こえた。
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