転生令嬢は小食王子のお食事係
* * *

 パタンと閉まったドアの向こうに消えていった娘に『さすがに悪いことをしたな』と思う。
「母上も余計なことを……」
 心配してくれる気持ちも分かるが、僕には僕のやり方がある。今、部外者をこの王子宮に入れるのは悪手だ。
「あっちゃ~、やっちまいましたね。殿下」
 突然背後からかかった声。僕は動揺することなく、振り向いた。
「お前いつからいた」
「そりゃあ殿下がこの部屋に入ったときからですよ。あんな隙だらけのお嬢さんが殿下の命を狙うとは思えませんでしたけど、万が一ということがありますからね」
「そうか」
 たしかに僕も念のためと思い、ドレスに何か仕込まれていないか確認するため、チェックし、紐もほどいた。もし間者か暗殺者ならば、武器を隠し持っているはずだし、色仕掛けしてくると思ったからだ。
 結果、どちらも違い、王妃である母の女官だったわけだが……。
「ノーマンに断ってもらったはずなのに、話があってから今日までの期間が短すぎて、ちゃんと伝わってなかったのかもしれない」
「そうですねえ。それにしても面倒なことになりましたね」
「ああ、動きにくくなるな。母に知られるのもよろしくない。だから、お前にはやってもらいたいことがあるんだが……」
「うへぇ、これ以上働かすんですかい」
「仕方ないだろう。お前以外は何かと動きづらいんだから」
「へいへい、分かりましたよー。で、何をしたらいいんです?」
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