part-time lover


「何勉強してたんです?」

「これでも一応文学部。英語の勉強してたけど、もう全く話せないよ」

「あ。私も」

思わぬ共通点がまた見つかった。

「そうだったんだ。今の仕事でも英語使うことってあるの?」

「今は…ごくたまにですかね。
外人のお客様の対応とか」

「あーなるほどね。受付のお姉さんも大変だなー」

そう言われて、もう個人情報を正直に伝えてもいいだろうと思い、今まで隠していたことを打ち明ける覚悟をした。

「あの、色々とお話ししておきたいことがあるんですけど…とりあえず飲み物頼んでもいいですか?」

「どうぞどうぞ。改まると緊張しちゃうな」

まだ全く酔っていないため、饒舌になるために少し強めのお酒を頼んだ。
色の濃いビールを一口含むと、アルコールで喉が熱くなった。

「大したことではないんですけど、知り合い方が知り合い方だったんで、ちょこちょこフェイク入れてたとこがあって。
まず私社会人2年目の24歳で、仕事も金融じゃなくてIT系なんです」

少し緊張しながらゆっくり落ち着いて話した。
それを伝えたところで、彼の表情は全く変わらず穏やかで、内心ほっとした。

「そうだったんだ。それなら落ち着いてるのも納得。それにしてもその年齢にしたら落ち着いてる方だと思うけど。
教えてくれてありがとう」

むしろお礼を言われてしまって驚いた。

「年齢サバ読んでたこと、気にしないですか…?」

「これだけ歳が離れてたら全然気にしないよ。ちょうど俺と10歳違うんだね」

「そう言ってくれてよかった…社会人になってまでパパ活だなんて引かれるかと思いました」

刺激の強いワードを含んだので声を潜めて呟いた。
安堵の様子が面白かったのか、彼が吹き出した。

「大丈夫だよ。年齢とか関係なくて、もはや透子ちゃんに会いたくて今こうなってるわけだし」

余裕がある男性の言葉はいちいち優しいから、勘違いしそうで困ってしまう。


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