part-time lover
「何で透子ちゃんはこういうことしようと思ったの?」
確信をつくような質問をされて一瞬呼吸が止まった。
なぜだろう。自分でもよくわからなかった。
けど…
「これが適切な回答なのかわからないんですけど…たぶん、自分の価値を見出したかったんでしょうね。
若さと自分が持ってるビジュアルとか話のスキルとかってものが、どれくらい価値があるのか知りたかった。
私のセックスにどれだけの価値があるのか。
けど、陽さんと会ってたらそういうのも虚しいことなんだなって気づきがありました。
楽しい時間に値段をつけられる方が悲しいなって。
なんなら、お金とか関係なしに会いたいって思ってもらえる相手になれることの方がずっと価値のあることなんだなって。
そういうことに気付けたのは全部陽さんのおかげです」
数口飲んだ度数の高いお酒のおかげなのか、大分饒舌になっていることに内心笑ってしまった。
「そこまで言ってもらえるほどのこと、何もしてないよ。けどありがとう。
やっぱり大人だな〜」
「そうですかね」
自分の心の内を話しても、受け止めてくれる物腰の柔らかさが心地よい。
「お金を払ってれば変に私情を挟まないし、色々と割り切れて楽なんだろうなって俺も思ってた。
けどそれってやっぱり虚しいよね。
俺も透子ちゃんと知り合ってからそういうのやめようって思ったよ」
このタイミングで共感なんかされたら、さらに正直に話してしまいたくなる。
「私も流石にもう虚しいことはしたくないです。
陽さんとも、本当の自分として接することができる関係になれてよかった。今の方がお会いしてて楽しいですもん」
「それは俺も一緒。この歳になると、あんまりプライベートで会う友達とかもいないし。こうやって家族も仕事も関係ないところで関われるって、すごくいい息抜きになるというか…大事な時間だなって思うよ」
私は家庭を持っていないので言葉の重みは違うかもしれないけど、本来であれば自分と関わるはずのない彼に対してここまで心を開いているというのは、きっと同じ理由からなんだろう。
「同じ感覚でお会いできているって分かって、嬉しいです」
「こちらこそ」
安堵と照れ臭さで、なんともいえないはがゆい沈黙が流れた。