part-time lover
「まあ、特に喧嘩もなく付き合ってますよ。
彼がなかなかマイペースなので、頻繁にあったり連絡取ったりとかはしてないけど。
この夏休みも向こうは実家帰ったり、友達との予定が入ってたりするみたいだし」
会えないことに不満があるわけではないつもりでいたのに、何故か愚痴を言うような口ぶりになっていて自分でも驚いた。
「マイペースな人かー。透子ちゃんが余裕ありそうだから安心しちゃうのかもね。
けど透子ちゃんも会えないと拗ねたりするんだね、可愛い一面」
それを聞いて面白そうに笑いを含みながら返した。
「別に拗ねてはないですけど…」
「そんなタイミングで声かけてよかった。
ねえ、透子ちゃんまだ飲める?」
話の区切れ目でちょうどよくお互いグラスが空いた。
時刻は22時前。
こちらはそこそこ酔ってはいるものの、まだ陽さんといたい気持ちでいっぱいだけど、彼の方は帰らなくても大丈夫だろうか。
「はい、もう少し飲めます。
けど、陽さんお時間大丈夫ですか?」
「うん。今日は妻と娘が実家に帰ってるから、気持ちは独身」
嬉しそうに潔く言う様子に笑ってしまった。
「なるほど、それはもっと飲みたくなりますね。
全然お付き合いします」
私の返事を聞き、彼の表情が明るくなる。
「ありがとう。そしたらいったん場所変えようか。
今回は食事も食べ切れてよかった」
ファーストオーダー以降食事は頼まなかったけど、お互いの好みのものなだけあってお皿の上の食べ物は全て綺麗になくなっていた。
「おいしかったですね。いいお店選んでくれてありがとうございました」
「こちらこそ。お手洗い大丈夫?」
「あ、じゃあ行ってきます」
お会計の合図なのを察し、大人しく促された通りトイレへと向かった。