part-time lover



席に戻ると、身支度を整えた陽さんに迎えられた。

「お帰りなさい。お会計済んでるから、行こうか」

「ありがとうございます」

彼が立ち上がって入り口へ向かうのに続いた。

「ありがとうございました」

店員に会釈し、お店を出て熱気を帯びた空気と人並みに包まれた。
連休中の浮かれた人たちの高揚感に引きずられて、理由もなく口角が上がってしまう。

人の多い坂を登る途中、陽さんが口を開いた。

「ごめん、喫煙所に寄りたいんだけどちょっと待っててくれる?」

今まで一緒にいる時にタバコを吸っているところなんて見たことがなかったから驚いた。

「タバコ吸われるんですね。
私も一本いただいてもいいですか」

私の返事を聞いて、陽さんが眉を上げた。
割と大人しそうな見た目なので意外と言われることは慣れているけど、お付き合いでもらいタバコはすることがある。

「いいよ。透子ちゃんこそ吸うんだね。
全然イメージになかった」

「よく言われます」

思った通りのリアクションに笑ってしまった。

「でも、それいいギャップだね」

横目でこちらを見ながらそんなことを言われて、思わずドキッとする。

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