part-time lover
点灯する部屋番号の方へ足を進め、彼に誘導されて部屋の中に入る。
染み付いたタバコの匂いと、狭い部屋の大半を占める大きなベッドがいかにもラブホテルという感じ。
靴を脱いで部屋に上がり、控えめにベッド脇のソファに腰掛けた。
この状況下、この人の前なら無理に取り繕ったりする必要もないだろうと思い、今日は脱いだ靴を揃えることもしなかった。
陽さんも私に続いて部屋に入ったが、立ち止まって辺りを見回す様子が自分の身の置き場に迷っているように見えた。
「まあとりあえず、飲み直そうか」
ふぅ、と一息ついた後そう呟きながら冷蔵庫の方に近づき、2本ビールを取り出すと、私の隣に彼が座った。
「着いて早々ビール開けるのが流石ですね」
彼から1本受け取り、すぐさまプルタブを引く私も人のことは言えないけど。
「めんどくさいことは考えずに、今日は好きなことして過ごそうよ。
はい、乾杯」
傾けられた缶に自分の缶をぶつけた。
その直後勢いよくビールを喉に流し込む彼。
さっきあれほど飲んだのに、変わらない飲みっぷりに笑ってしまう。
少し酔った彼は、言動が少しだけ大胆になって、いつもの落ち着いた印象がいい意味で覆された。
それにつられて私も、今日くらい本能のままに動いても良いかな、なんて自分を甘やかしたい衝動に駆られた。
酔いがさめないよう、ぐっとお酒を流し込む。
強めの炭酸が通る喉越しが気持ちいい。