part-time lover


温度を調整して彼の元に戻ると、自分のケータイをスピーカーに繋いで音楽を流してくつろいでいるところだった。

「あ、これ…」

1フレーズ聴いただけで、誰の曲なのかすぐにわかった。
私の好きなアーティストの新譜。

「お湯張ってくれてありがとう。
この曲、透子ちゃんも好き?」

ソファでくつろぎながら、微睡んだ視線をこちらに向けてきた。

「はい!この新曲、夏らしくていいですよね。
最近ヘビロテしてたので、びっくりしました」

テンションが上がるのを押さえられず、声のトーンが高くなる。
その返答を聞いて、彼が目を輝かせた。

「そうなんだ。
なぜかわかんないけど、この曲初めて聴いた時、透子ちゃんのことが頭に浮かんだんだよね。
感覚が間違ってなかったのが嬉しい。
ねえ、隣座って」

ソファの隣の席をトントンと叩いて、彼が私を招いた。
その様子が可愛らしくて、ときめく気持ちが止まらない。

表情が緩むのを必死に堪えようとするあまり、きっと今ひどい顔をしているんだろう。

極力感情が出ないように、ゆっくり彼に近づいて、ゆっくり隣に腰を下ろした。

目が合い、気恥ずかしさと触れたさの気持ちを込めて彼の目を覗き込むと、優しく微笑み返されて、ときめきに拍車がかかる。

次第に彼の顔が近づき、唇が触れると溶ける心地がした。
自分好みのメロディを遠くに聞きながら、思考が停止していくのがわかった。

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