終わる世界で、きみと恋の埋葬
「足大きいのいいなー」

「いいだろー」

「何センチ?」

「二十六」

「へえー。二十六って平均?」

「平均くらいじゃないの、知らないけど。結構どこでも見かけるサイズだよ」

「へえー」



「おはよう、健康のためにラジオ体操をしよう」

「おはよう。なんで突然」

「そういえば運動全然してないなって思い立った。いざってときのためにしておこう」

「たとえば?」

「宇宙人が攻めてくるかもしれないだろ」

「いやそれはな、い……うーん、うつくしくなる以上ありえないとは言えなくなっちゃったからな……」

「よしやろうそこ立って。第四まで覚えてきたから」

「第四まで覚えてきたから!?」



「見てこれ影絵教えてもらった」

「あっそれ手が大きくないとできないやつだ! いいなー!」

「いいだろー」



「じゃあちょっと絵描いてくるね」

「ん。……邪魔しないから俺も美術室行っていい?」

「ん? いいけど……ああ、ずっと教室だと飽きるよね」

「まあそんなとこ」


ふたりで廊下を歩きながら、ふと思いついて「お題ほしい」と言ってみた。そろそろ何を描こうか全然思いつかなくて迷ってたところだったんだ。


んー、と少し迷った渡辺くんは、「大切なもの描いて」と静かに言った。目は合わない。


「え? いいけど、大切なものってなんだろ。大切なもの……大切なものね……うーん……きみは? きみの大切なものは何?」


質問に質問を返したのは、本当に思いつかなかったのと、それからもうひとつ。


わたしがきみの心のうちを占めているなんて思ってはいないけど、ただ、大切なものになるんじゃなくて、大切なものを知るくらいなら、わたしだって願ってもいいだろうか、と思ったからだった。


渡辺くんはちらりとこちらを見て即答した。


「高橋さん」
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