終わる世界で、きみと恋の埋葬
「っ」


浅い息を押し殺す。


うそ。ほんとに。名前呼ばれただけ……なわけないよね。うそ、わたしの謙虚さの意味とは。


「ほ、んとに?」

「ほんとに」

「わたししかいないからじゃなくて?」

「からじゃなくて。……ごめん、それ前俺が言ったことあったよな。そんなことめちゃくちゃ言われたくないなって今言われて思った。ごめん」


ううん、とぶんぶん首を振った。律儀だなあと思った。


「……わたし、きみを描きたいな」


わたしの大切なものは、きみだから。わたしの大切なものも、きみだから。


瞠目して立ち止まった渡辺くんが、困ったように笑った。


「それは、そういう?」

「……うん。そういう」


そっか。そうなんだ。……そっか。じゃあ。


「ふたりなら、いいよ。俺ひとりなら嫌だ」

「なんで?」


よく晴れた朝に負けないくらいからっとした、まるで当然みたいな口調が降る。


「高橋さんだけでいいんだ。きみが、星か花か——何か一番きれいなものになるまで俺を覚えていてくれたら、それでいい。残らなくていい。きみだけがいい」


わたしは水になりたいんだってば、という軽口はうまくこぼれずに胸が詰まった。


「……なんで」

「たとえ絵だとしても、俺をひとりにしないでほしいって言ったら怒る?」
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