終わる世界で、きみと恋の埋葬
「あすかくん」

「ん? なに、あすか」

「なんでもない」


たくさん名前を呼ぶようになった。


本当はお出かけしたかったけど、水族館とか映画館とか遊園地とか、かつての定番のお出かけコースは全滅している。


行けるところと言ったら公園くらいだけど、あまり出歩かない方がいいから、結局学校にいようか、となってしまう。


仕方ないけどちょっと寂しいとこぼすと、「どこにも行けなくても大丈夫だって。俺は思い出づくりのプロだからな」とあすかくんが笑った。


「なにそれ」

「弟子入りしてもいいよ」

「する」

「するのかよ」


おかげさまで楽しいからね、だろ、と笑い合った。


あすかくんがわたしの前で泣かないひとなのは知っている。悲しい思い出話もしない。


だからわたしも、あすかくんの前では泣かない。悲しまない。


ただ、ふたりで笑っていられたらいいやって思うんだ。


あすかくん、と何度も名前を呼んで、ゆっくり寂しさを分解する。
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