破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします
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「ねぇ、アーシェ。ボク、これはさすがに買い過ぎだと思う」
川のせせらぎと、道行く人々の楽し気な声で賑わう夜の温泉街。
酒場やレストラン、温泉地ならではのスキンケアグッズや民族品を扱う土産屋などが建ち並ぶ一角、フレッシュな野菜やフルーツが並ぶ青果店の前で、ノアは両手いっぱいに荷物を抱えて呟いた。
ノアの隣には、同じように荷物を両手に持ったザックが「まだ買うのか……」と呆れた眼差しで果物を眺めるアーシェリアスの背中を見守っている。
ふたりが持つのは、明朝の出発にあたり必要な道具や食材だ。
旅を始めた頃よりも人数が増えているので、仕入れる量も二倍になっている。
背後で愚痴るノアとザックの声に、アーシェリアスは頬を紅潮させウキウキしながら振り向いた。
「だって、聖なる森で育った野菜や果物よ!? 絶対美味しいと思うし、オプション効果とかついてそうだし」
魔物を寄せ付けない不思議な森の一角で作られたものであれば、どこかしら特別に違いない。
以前、マレーアの市場でもカリドの商人が売っていた果物がとても美味しかった記憶のある。
だから、ここに並ぶものもきっとアタリが大いに違いないと、アーシェリアスは再び視線を品物に戻した。