危険な愛に侵されて。



本当は今すぐ殴りかかったり、この手を剥がしたくなるけれど。

私たちの両サイドには人がいるため、視界に入るほど大きく動くことは許されない。


つまりこのままじっとするしかできないのだ。

もちろん阻止しようとバレないように右手で彼の手首を掴むが、力がまったく敵わず。



「……っ」

ついにはスカートの中に手を入れられ、直接太ももをなぞるように触れてくる。


思わず声が漏れそうになったため、慌てて手で口元を覆う。

そんな私を見て彼は楽しそうに笑うのみ。
悪魔の笑いだ。



その手は止まらず、私の太ももの付け根へとなぞりながら向かっていく。

その手の動きであの日の感覚を思い出してしまいそうだ。


彼のなぞる動きに合わせて足がビクッと反応してしまう。



そしてようやく手の動きを止めてくれたかと思えば、今度は手のひらで大胆に太ももを掴んできた。


「……今日はナイフ、ないんだな」

教科書を見るフリをして、いつのまにか私のそばまでやってきた彼がそう囁いてきて。


「はな、して…」
「あ、でも左のほうはまだ確認してねぇな?」

「ほんと、に…ダメ」


彼の行動は私の精神を弱くさせる。

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