悪役令嬢、乙女ゲームを支配する
「えぇぇぇ!?」
この世界に来て一番の仰天に、私は身体ごと後ろにひっくり返りそうになる。
ギャグマンガみたいな私の反応を見て更にリリーは楽しそうに笑い、私の手を取った。
「でもアルとの結婚がほとんど決まったようなものだった。わたしはそれを受け入れて、アルと幸せになるのもいい人生と思うことにした。アルは素敵な人だったし……でもね、わたし密かにずっとマリアのことを応援してたのよ。だってアルの前で段々と乙女になっていくマリアがわたしは可愛くて仕方なかったんだもの」
「え、そ、そうだったの? 本当に? リリー、無理してないよね?」
だって本来のゲームでもリリーとアルが結ばれるエンディングが一番の大団円じゃないの?
えっ? じゃあこの世界のリリーは誰ルートに突入してるっていうのよ! ハロルド!? ノエル!? どっちとも釣り合わないから喜べない!
「マリアを見て、勇気をもらった。わたしも――身分なんて障害は気にしないで、自分に素直になってみる。わたしにそのチャンスをくれたのはマリアよ」
「――身分て、まさか」
「ふふふっ! 内緒よ」
リリーはロイの方を見て笑い、私はまさか二人が両想いなことに驚き、私達を見てロイは不思議そうに首を傾げる。
「大好きよマリア。これからもマリアはわたしにとって一番の親友よ」
「リリー……! 私も! 大好き!」
私は思いっきりリリーに抱き着く、というよりは飛びついた。
もう二度とリリーとこうやって笑い合えないと思っていた。
リリーは私の思った通り、可愛くて優しい素敵な女性。
これからも変わることなく、私はリリーとたくさんの思い出を作って行きたい。
「ねえリリー! 私リリーとしたいことがいっぱいあるの! まず街のカフェでおしゃべりをして、お揃いのものを買ったり――」
「マリア、後ろ……マリアのお客さんみたいよ」
真莉愛の時できなかったことをリリーに熱く語っていると、マリアが私の背後を見て言う。
振り返ると、そこには気まずそうな顔をしたジェナジェマが立っていた。