15年目の小さな試練
閑話

空手のお誘い2

「叶太!」

 ようやくインフルエンザでの出校停止が解けた月曜日の昼休み。

 食堂にて、真四角の四人掛けのテーブルでハルと隣り合わせに座って弁当を食べていると、真顔の淳がやってきた。

「おう、どした?」

「いや、……今、ちょっといい?」

 前の授業が少し早く終わり、今は昼休みも始まったばかり。ダメと断る理由もない。

「座る?」

 と席を勧めると、淳はオレの隣、ハルの向かい側の椅子を引いた。

「ハルちゃん、ごめんね。お邪魔します」

「いいえ、ごゆっくり」

 にこりと微笑むハルに、淳も表情を崩す。

「ありがとう。けど、ハルちゃん、相変わらず、なんか言葉遣いが硬い?」

「あ、ごめんなさい」

 淳の指摘に、ハルは四月のやり取りを思い出したのか、大きな目を見開いた。
 そう言えば、オレは道場で会うけど、ハルが淳に会うのはあの日以来かも知れない。

「うーん。……まあいっか。ハルちゃんの言葉遣いは丁寧語って言っても、距離を感じると言うよりは、育ちの良さがにじみ出てる感じだし」

「……えっと、そんな事ないと思うんだけど。まだ慣れないだけで。本当にごめんね?」

 ハルが困ったように再度淳に謝るのを見て、オレは話題を変えた。

「で、何の用?」

 用事がなかったら来ちゃダメって事はないけど、オレに声をかけた様子からして、何か話があると見た。

「あ、そうそう。なあ、叶太」

「うん」

「空手部、入って?」

 また突然何を言い出すんだ、こいつは。

「それは四月に断ったよな?」

「それを承知で、お願い!」

 淳は突然、テーブルに手を突くと、ガバッと頭を下げた。
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