15年目の小さな試練
 そんな会話をしながらも、オレも淳も弁当を食べる手は動いている。
 ハルはオレたちの話に口をはさむこともなく、ゆっくりと、いつものように丁寧にお弁当を口に運ぶ。

 オレと目が合うと、ハルはにこりと笑ってくれた。

 可愛い。今すぐ抱きしめたい。……けど、今ここでやったら怒られるのは間違いないから、諦めた。

 ハルはそのまま、またお弁当に意識を戻した。オレも目の前の弁当に手を付ける。オレはほぼ食べ終わり。ハルはまだ半分くらい。
 沙代さんの弁当は相変わらず美味い。
 昨日の夜までいなかったオレが今朝になって突然顔を出したのに、沙代さんは笑いながら朝食も弁当も準備してくれた。

「もしかして、と思ってたんです」

 どうやら、最初からオレの分も用意してあったらしい。

 そうだよね? 月曜日解禁と言われて、オレが大学行く時間まで我慢できるはずないよね? 何しろ、日が昇る時間すら待てなかったんだから。

 つまり、オレが牧村の家に戻ったのは、深夜0時ピッタリ。月曜日に日付が変わった瞬間だった。

 だからオレは、

「さすが沙代さん!」

 と笑った。

 だけど、ハルは沙代さんの言葉に本気で驚いたみたいで、目を丸くしていた。

「……って、叶太、聞いてる?」

「……ん? もう話、終わったよな?」

 オレ、今、ハルのこと考えるのに忙しいんだけど。

「終わってないし」

 と淳がため息を吐く。

「型だってさ、みんなで同じの練習する訳にはいかないし」

「別に同じの打ってりゃいいんじゃない?」

 そんな初心者や初級者ばっかりだったら、試合に出るとか考えなくてもいいよな?
 大体、部活で空手ってのがイメージ湧かない。
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