15年目の小さな試練
 そんな訳で、今日は四回目の空手部、ハルの二回目のピアノの日だった。

 夕方、ピアノを教えてもらって、そのまま夕飯を一緒に食べて、それから二人でお茶を飲みながらおしゃべりしたと言っていた。
 その中で、オレの知らない話が出ていたとしたら、「ハルちゃん、大丈夫?」の言葉にはとても重い意味がある。

「うーん、何がどうって訳でもないんだけどさ」

「それでも良いから。……ハル、そんなに疲れてた?」

 いや確かに疲れているんだ。

 大学に入学してから、やたらと課題やレポートが多く出る。どれもハルは楽しそうにやっているけど、とにかく量が多くて、就寝時間がこれまでの九時から徐々に十時に伸びつつある。

 そして土日も、一日身体を休められる日はほとんどなくなっていた。高校時代は土日のどちらかは、ほぼ丸一日寝て過ごす生活だったのに。

 ちなみにオレは更に時間がかかっていて、ハルが寝た後、各種課題を夜中までかけて片付けている。この辺りに、頭の出来の違いがしっかり出ている。

「いや、ハルちゃんは楽しそうだったけど、ちょっとあれは尋常じゃないって言うか……」

 兄貴は言葉を濁したけど、それは多分、習熟度別に出されている課題の事だろう。

「山野先生の演習のこと?」

「そう、それ。今日、ハルちゃんに今出てる課題ってのを見せてもらったんだけど、ちょっと一年生がやるには難しすぎるだろうって思って、さすがに心配になった」
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