15年目の小さな試練

和解と戸惑い

「あ、ハルちゃん、叶太」

 お昼休み、カナと食堂でお弁当を食べていたら、高校の時のクラスメイト、幸田くんが歩いてきて、わたしたちのテーブルの横で足を止めた。

「久しぶり!」

 カナが笑顔で手を振り、わたしも

「幸田くん。こんにちは」

 と取りあえず、ごあいさつ。
 幸田くんはニコッと笑い、

「ここ、相席してもいい? なんか混んでて、席空いてなくて」

「もちろん!」

 カナは笑顔で即答。

 四人掛けのテーブルだから、まだ二人分席はある。今日は二人ずつの対面のテーブル。カナが隣の椅子に置いてあったデイパックを自分の椅子の背にかけた。

「ありがとう!」

 嬉しそうに笑って、幸田くんは後ろを向くと

「おーい、田尻ー! ここ、いいってー!」

 と大きな声を上げた。

「ちょっとー、大声で呼ばないでよ、恥ずかしい」

 幸田くんを睨みながら、やっぱり空席を探していたらしい田尻さんが数メートル向こうから歩いてくる。

 そうして、幸田くんの見つけたのがわたしたちのテーブルだと気が付くと、田尻さんは少しきまり悪そうに、

「えーっと、お邪魔してもいいのかな?」

 と言った。



 高校一年生の時、田尻さんとは色々あって、田尻さんの言動に追い詰められたわたしは、ストレスで体調を崩し、呼び出された校舎裏で発作を起こして危うく命を落としかけた。

 それ以来、カナは田尻さんを警戒している。

 田尻さんとのいざこざはもう終わった事で、わたしと田尻さんは今では友だちと言ってもいい仲だと思う。だけど、カナは忘れられないみたいで……。
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