15年目の小さな試練

不調

 最近、雨の日が増え、じわじわと上がってきた気温と湿度が不快感を増している。

 そんな気候もあってか、ハルの体調が良くない。ハルは何も言わないけど、疲れが溜まってきているのがよく分かった。

 元々、ハルは朝が苦手だったのだけど、最近は今まで以上にスッキリと起きられない。朝起きられないのは調子が悪いせいだ。そういう日は休んで欲しい。だけど、ハルはとてもダルそうにしているのに、ちゃんと起きてくる。

 食欲も落ちている。ただでさえ少ない弁当を食べきれない日が増えてきた。夕飯など疲れから、まともに食べられない日もあるくらいだ。それでも、本格的に食べられなくなると入院が視野に入って来るから、ハルは頑張って果物やゼリーを口にしていた。

 通院は週一。心臓の調子があまり良くないと言われている。くれぐれも無理はしないように、と。ハルは先生には「はい」と返事を返しつつも、これまで通りにすべてをこなそうとする。

 ピアノの練習すら、短い時間ながらちゃんとやる。止めたかった。だけど、たった五分や十分の練習を止めることはできなかった。

 授業や課題だって、疲れているのが分かっていても、ハルが大丈夫だとやってしまうのまでは止められなかった。もし、それを止めてしまうなら、大学に通う意味って何だろうと思ってしまったから……。

 何一つ手を抜こうとしないハル。

 そんな風だから、高校時代と比べて、ハルが身体を休められる時間は明らかに減っていた。


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