15年目の小さな試練
「じゃ、俺たち、9号棟だから、先に行くね」
9号棟は食堂のある場所から少し歩く。
わたしの歩くスピードの遅さとトイレに寄ったりする時間を考えると、十五分前でもギリギリなんだ。
「あ、俺も寄り道したいから、一緒に行くわ」
海堂くんが立ち上がり、
「じゃあ、またね」
と残った3人に手を振り、食堂の出口へと向かって歩いている時だった。
「うわっ、叶太くん、かわいそう~!」
不意に、本当に不意に、その言葉が耳に飛び込んできた。
その瞬間、ドキンと大きく心臓が跳ねた。
聞きなれた声。
大学に入ってから知り合った女の子の、明るくて元気な声だった。
……えみちゃん?
声のした方に目を向けると、そこには友だちらしき女の子と楽しそうにおしゃべりをするえみちゃんがいた。
反射的にカナを振り仰いだけど、カナは海堂くんとお話し中で、えみちゃんの言葉は聞こえていなかったみたいだった。
何故か、ひどくホッとした。
だけど、一度大きく飛び跳ねた心臓はやけにあおっていて、ドクンドクンと大きな鼓動が全身に響いていた。
9号棟は食堂のある場所から少し歩く。
わたしの歩くスピードの遅さとトイレに寄ったりする時間を考えると、十五分前でもギリギリなんだ。
「あ、俺も寄り道したいから、一緒に行くわ」
海堂くんが立ち上がり、
「じゃあ、またね」
と残った3人に手を振り、食堂の出口へと向かって歩いている時だった。
「うわっ、叶太くん、かわいそう~!」
不意に、本当に不意に、その言葉が耳に飛び込んできた。
その瞬間、ドキンと大きく心臓が跳ねた。
聞きなれた声。
大学に入ってから知り合った女の子の、明るくて元気な声だった。
……えみちゃん?
声のした方に目を向けると、そこには友だちらしき女の子と楽しそうにおしゃべりをするえみちゃんがいた。
反射的にカナを振り仰いだけど、カナは海堂くんとお話し中で、えみちゃんの言葉は聞こえていなかったみたいだった。
何故か、ひどくホッとした。
だけど、一度大きく飛び跳ねた心臓はやけにあおっていて、ドクンドクンと大きな鼓動が全身に響いていた。