15年目の小さな試練


「叶太くんを解放してあげて!」


 脳裏に浮かび上がったのは、わたしを責める声。

 連れて行かれた高校の校舎裏は、緑が深くてとても綺麗な場所だった。

 その瞬間まで、鮮やかに輝いていた世界は、田尻さんの言葉で急激に色をなくした。


「一体、いつまで叶太くんを縛り付けるつもり?」

「もう一ヶ月経ったけど、なにも変わってないじゃない」


 吐き捨てるように、田尻さんは言った。


「叶太くん、かわいそう!」


 ……違う。

 あれは、誤解だったから。

 カナはわたしが良いって言っていた。

 田尻さんは、ただカナを想って、そう言ったんだ。

 ……違う。

 だって今、田尻さんはわたしの大切な友だちだもの!

 唇を噛みしめて、ギュッと拳を握りしめて、三年も前の田尻さんの言葉を頭の中から追い出す。



 なのに、今度は、また別の女の子の甲高い声が脳裏に浮かび上がった。

 二年前、カナが助けた女の子。

 体調を崩して休んでいた保健室に乗り込んできた……。


「叶太くんと別れてちょうだい」

「あなたって、完全に叶太くんの重荷じゃない」

「あなたみたいな子が、なんで叶太くんの彼女なのか、分からない」

「いくら幼なじみだからって、甘えすぎじゃないの?」

「一方的に、頼るだけの関係って、カレカノの関係じゃないよね?」

「あなたって、大切にしてもらうばっかりじゃない」

「あなたとつき合ったって、叶太くんに良いことなんて、何一つないでしょ?」


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