15年目の小さな試練
「えっとさ、ハルちゃんが健康で、ただ楽しく課題をこなしてるんだったら、反対しないよ。鍛えられるとは思うしいい勉強にもなると思う」

「うん」

「だけど、体調が悪くて、無理させたくないんだったら、やる必要はないと思う」

「……そっか」

「あのさ、あんな問題もらってるの、ハルちゃん一人だけなんだろ?」

「うん。俺の課題も見たんだよね? あれが普通。別に、俺一人が遅れてる訳でもなんでもないよ?」

 叶太の言葉に思わず笑う。

「大丈夫。分かってるって」

「ホント?」

「ホントホント。俺だって、五年前に同じ授業取ってたし」

「あ、そっか」

 電話の向こうから、叶太の笑い声が聞こえた。

「全員が同じ課題出されてたけどね」

「うん。今年からだってね、習熟度別の課題って」

「ああ」

 だけど、それも不思議な話だった。

 年度末までに、各授業の内容は打ち合わせに基づいて決められていて、そこでは例年通りとされていたんだ。

 もちろん、同じ授業名でも担当の先生が変われば、先生ごとの特色は出るし、生徒の様子を見て授業内容に多少の変更はある。だけど、いくらハルちゃんが賢かったからって、四月中にいきなり習熟度別課題に変えて、一人だけに難しい課題を出したりするかな?

 別にスキップ制度がある訳でもないから、ハルちゃんが今年、山野先生の演習1で頑張ったからって、来年以降の演習の単位をもらえる訳でもない。そもそも、今年は大教室で一学年まとめて受けてる演習も、二年後期からは先生別の少人数制だ。
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