15年目の小さな試練
 ハルちゃんが今もらっているレベルの課題は、来年以降の経営戦略とかマーケティングとかの各学科で習っていくような内容のものだ。

「今は習熟度別の課題ってことでハルちゃん一人が難しいのを出されてる訳だけど、その課題、今やらなくても、三年くらいでちゃんと、同じようなのを全員が出されるから」

 どれも必修科目だから、既に勉強した内容だったとしても、分かっている内容だったとしても、ハルちゃんも来年以降もう一度勉強することになる。

「……あ、そっか」

「そう。ハルちゃんがもし元気いっぱいで体力が有り余ってるんだったら、別に勉強してもいいと思うんだけどね。でも、入院するくらい体調が悪いんだったら、無理にする必要はないと思うよ」

「……だよね」

 珍しく、どうにも歯切れが悪い叶太。不思議になって、

「なんで、お前、ハルちゃんを止めないの?」

 と聞いてみると、

「あんまり、ハルが楽しそうでさ」

 と、叶太は困ったように言葉を濁した。

「確かに楽しそうだったな」

「うん。……ハル、いつだって色んな事、我慢してるだろ?

 高校の時から部活も入ってないし、大学入っても部活はもちろん、サークル活動もやらない。友だちと飲みに行ったり、遊び歩いたり、バイトしてみたりとか、いわゆる大学生っぽい事とか、何にもしてないんだよな」

 そう言われて、言葉に詰まる。
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