15年目の小さな試練
「え、何!? これ、ハルちゃんの手作り!? マジで!?」

 お兄ちゃんとお互いのケースを見せ合っていた晃太くんは、お兄ちゃんの手から自分のを取り返すと、まじまじとケースを見つめた。

「すごいわね、陽菜ちゃん! まさか手作りだなんて思いもしなかったわ」

 お義父さまにケースを変えてもらっている最中だったお義母さまは、付けかけのケースにそっと手を触れた。
 ケースをしっかり見る前に手紙を読んでいたおじいちゃんも、慌ててケースを手に取った。

「あのね。とっても簡単なのよ? それにプラスチックのケース部分は買ったものだし」

「いや、手作りには見えないぞ。すごいな、陽菜」

 パパは早速使い始めたケースをそっと撫でながら、「ありがとう、大事にするよ」と言ってくれた。

「私のも着物生地かい?」

「うん。ちょっと渋すぎたかな?」

 おじいちゃんには、紺地の絣を使った。ちょっと色が渋かったので、留め具を少し明るい色にして、裏地は明るめの黄色で仕上げた。紺と黄色のコントラストがなかなか綺麗だと思う。私の好きな組み合わせ。

「いや、これはシックと言うんだろう。とても素敵だよ。ありがとう、陽菜。大事に使わせてもらうよ」

 優しいおじいちゃんの表情に心が和む。

「ありがとうな。俺も大切に使うよ」

 お兄ちゃんにはチェックっぽく四角が並んだモザイク柄。青が基調だけど、黄色から赤や紫まで、色んな色が使われている。それが絶妙なバランスでまとまりを見せているのが気に入って使った。裏地は深緑。
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