15年目の小さな試練
 お義父さまは、ケースが手作りと聞いてから、手の上でくるくる回しながら360度観察をしている。

「すごいな、陽菜ちゃん。これ、売れるだろ?」

「ま、まさか! そんな大層なものじゃないです」

「いや、大層なものだよ。ありがとう。私も大切に使わせてもらうよ」

 お義父さまが魅力的な笑顔を浮かべて、わたしをじっと見るものだから、恥ずかしくなって頰が上気する。視線は逸らせないままにどうしようと思っていると、背中からカナに抱きしめられた。

「親父、ハルにちょっかいかけるの禁止ね?」

「ただ、礼を言っていただけだろ」

「だったら、ハルはこんな赤くならないし、身体もこんな風にこわばらない」

 そう言いながら、カナはわたしの隣に移動して抱き寄せてられ……ながら、カナの顔が近づいてくる。それから、おもむろに唇にキスが……。
 びっくりして何もできない間に、カナは満足げな笑みを浮かべて、顔を離した。
 徐々に今、自分がどこにいるのかを思い出す。

「カ、カナ!?」

 いくら結婚しても、さすがにこれは! カーッと顔が熱くなる。慌ててカナから距離を取って唇を押さえると、カナは満面の笑顔で告げた。

「ハル、ありがとう。オレの分まであるとは思ってなかったから、すごく嬉しかった。オレも大切に使わせてもらうね」

 カナは流石にそれ以上のスキンシップはしてこなかった。だから、私も動揺しつつも、何もなかったかのように答える。

「う、ううん。大体、プラスチックケースはカナに買ってもらったんだし……、あ!」

「どした?」

「あ、あの」

「ん?」

 カナから目を逸らして、みんなの方を見る。

「あのね、わたしからのプレゼントって言ったけど、カナと2人からなの」

「ん? オレ、何も手伝ってないよ?」

 隣でカナが不思議そうな顔をする。だけど、わたしはそのまま続けた。みんなも何が始まるのか、ちょっと不思議そう。

「ケースはカナ、でしょう?」

「誰が何の機種か調べて、ケースをネットで取り寄せただけじゃん」

「でも、だって、カナったらお代金、もらってくれないんだもん」
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