15年目の小さな試練
「あー、俺はもっと夜更かしだったかも。四、五年生の頃には、十一時までは起きてた気がする」

 叶太は空手なんかやっていて、朝早く起きるから、夜も割と早く寝ていた。反対に俺は夜型だったから。

「普通そうだよね。今でも、小学生より早く寝てるのにさ、……なんかね、学生の本分の勉強を楽しくしてるだけのハルに、勉強するな、もっと早く寝ろとか言いにくくてさ」

 叶太は深く息を吐いた。

「だけど、……ハルの身体のが大事だよね。疲れが溜まってるのは本当で、そろそろ限界かなって思うもんな」

「ああ」

 ハルちゃんの身体が一番大事。

 きっと、そこを忘れなければ、間違えたりはしないんだろう。

「ありがと、兄貴。ハルと話してみる」

「ん。何か力になれそうなことがあったら、何でも言って」

「うん! ありがとう。頼りにしてます」

 吹っ切れたように叶太の声が明るくなった。

「それじゃ、おやすみなさい!」

「おやすみ」

 俺は二度目のおやすみを口にして、電話を切った。
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