15年目の小さな試練
 5月に入るとグループでの演習が入ってきた。
 班のみんなで一つのケースについて議論して、結論を出す。一時間半の授業の前半で議論をして、最後の三十分で発表する。みんなで一つのことを考えるなんて初めての経験で、ワクワクした。

「それぞれが全力を出してこそ、最高のパフォーマンスにつながるのよ。複数人で知恵を出し合い、一人じゃ得られない発想を出しなさい」

 そう言われて、わたしも少しでも力になれるように頑張ろうと思った。



 6月になると、今度は一回では終わらない演習になった。
 二週かけて、放課後にも集まって議論して、発表資料を準備する。

 三年生になると、今度は自分たちで事業を立ち上げて経営するなら、と考える演習もあるらしい。既存の事業をどうマネジメントするかという今の課題は、その前哨戦だという。


 5月以降も個人課題は続いていて、6月になるとそれ以外にグルーワークの課題も増えた。

 大変だったけど、今頑張れば頑張った分だけ、ベースとなる知識が深まるのだろうと思うと、少しでも多くの知識を得たいと思えてならなかった。自然と勉強にも力が入った。

 頑張れば頑張っただけ先に進めるという手加減のなさが、とても嬉しかった。

 同じ班の子たちに話したことは本当で、出された課題を解くのは本当に楽しかったんだ。

 だけど、最近、気が付いてしまった。

 山野先生が容赦なく、手加減なくわたしに向き合ってくれる理由が、きっと好意だとか、わたしを育てようと思ってとかではないことに……。

 ううん。今までも、きっと分かっていた。

 ただ、わたしが気付きたくなかっただけで……。


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