15年目の小さな試練
「えーっと、明兄もなんか飲む? 用意するよ」
「じゃ、豆轢いて入れたコーヒー」
……明兄、それ多分、嫌がらせだよね?
「ごめん。それはない」
「用意しとけよ」
「んー、でも、コーヒーはハル、飲まないしなぁ」
ね、ハル?
と明兄の後ろからハルをのぞき込むと、ハルは少し困ったような表情。
まさか、ハルが豆も用意しておけって思ってるなんてことはないだろうし、明兄の無茶ぶりに困っているのだろう。だけど、明兄がオレに無茶を言ったりからかったりするのは、割といつものことだからか、ハルは何も言わなかった。
「でも、ドリップコーヒーならあるよ」
そう伝えると、明兄は仕方ないとばかりに、
「それでいい」
と言う。
「ハルは何がいい? ピーチティーとかストロベリーティーとか、後、カモミールティーとかもあるよ」
「えーっと、……お水でいいよ?」
「水? 麦茶もあるけど」
「じゃあ、麦茶」
「了解。ちょっと待っててね」
オレは明兄の横から手を伸ばして、ハルの頭をなで、明兄に小突かれる前にスッと手を引き、ミニキッチンへと移動した。
お湯の準備をしながら二人の方を見ると、明兄は慈愛に満ちた優しい表情でハルに何か話しかけていた。
兄貴なら幾らでも邪魔できるけど、明兄がハルを可愛がるのは邪魔できない。二人の間には、オレよりも長い歴史がある。正真正銘、この世に二人きりの兄妹なわけだし……。
それに、なんか、明兄からハルを取り上げたらダメだって、そんな気がするんだよな。オレが明兄を邪険にしたら、ハルも困るだろうし。
仕方ないだろ?
オレは明日も明後日もその次も、ずっとハルと一緒なんだから。
そんな事を自分に言い聞かせながら、オレはコーヒーと麦茶の準備をしながら、二人の様子をそっと見守るのだった。
☆ ☆ ☆
「じゃ、豆轢いて入れたコーヒー」
……明兄、それ多分、嫌がらせだよね?
「ごめん。それはない」
「用意しとけよ」
「んー、でも、コーヒーはハル、飲まないしなぁ」
ね、ハル?
と明兄の後ろからハルをのぞき込むと、ハルは少し困ったような表情。
まさか、ハルが豆も用意しておけって思ってるなんてことはないだろうし、明兄の無茶ぶりに困っているのだろう。だけど、明兄がオレに無茶を言ったりからかったりするのは、割といつものことだからか、ハルは何も言わなかった。
「でも、ドリップコーヒーならあるよ」
そう伝えると、明兄は仕方ないとばかりに、
「それでいい」
と言う。
「ハルは何がいい? ピーチティーとかストロベリーティーとか、後、カモミールティーとかもあるよ」
「えーっと、……お水でいいよ?」
「水? 麦茶もあるけど」
「じゃあ、麦茶」
「了解。ちょっと待っててね」
オレは明兄の横から手を伸ばして、ハルの頭をなで、明兄に小突かれる前にスッと手を引き、ミニキッチンへと移動した。
お湯の準備をしながら二人の方を見ると、明兄は慈愛に満ちた優しい表情でハルに何か話しかけていた。
兄貴なら幾らでも邪魔できるけど、明兄がハルを可愛がるのは邪魔できない。二人の間には、オレよりも長い歴史がある。正真正銘、この世に二人きりの兄妹なわけだし……。
それに、なんか、明兄からハルを取り上げたらダメだって、そんな気がするんだよな。オレが明兄を邪険にしたら、ハルも困るだろうし。
仕方ないだろ?
オレは明日も明後日もその次も、ずっとハルと一緒なんだから。
そんな事を自分に言い聞かせながら、オレはコーヒーと麦茶の準備をしながら、二人の様子をそっと見守るのだった。
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