15年目の小さな試練
「うーん。ハルちゃんは、俺のこと邪魔?」

「え!? まさか!」

「……だよね。よかった、ちょっとホッとした」

 ふうと息を吐きながらハルちゃんの顔を覗き込むと、ハルちゃんは困った顔をしていた。

「ハルちゃん、俺さ、ハルちゃんのこと、本当の妹と同じだと思ってるよ?」

「え? ……あの、ありがとう」

 俺の不意打ちに、ハルちゃんはまた真っ赤になる。色白な分、赤くなるとすごくよく分かる。

「お兄ちゃんって生き物は、妹を甘やかしたくて仕方ないの。分かる?」

「……あの、……はい」

 だよね。

 明仁っていうハルちゃんを溺愛する兄を持つハルちゃんには、否定できないよね?

 思わず、黒い笑みが表に出そうになる。いやダメだろ。これは俺のキャラじゃない。

「可愛い妹を、誰にも邪魔されずに甘やかして可愛がれるのは、俺もすごく嬉しいんだけどな?」

「あの、でも……」

「いつも、叶太が張り付いてるから、俺の出る幕ないでしょう?」

 少しの間の後、ハルちゃんは小さく頷いた。

「だから、ね。一週間くらい、俺にお兄ちゃんライフを楽しませてくれない?」

 そこまで言っても、ハルちゃんはまだ頷けずに困った顔をしていた。
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