15年目の小さな試練
「えっとねハルちゃん。俺は妹だけじゃなくて、弟にも結構甘い自覚があるんだけどね?」

「うん。晃太くん、優しいもんね」

 ハルちゃんはこれにはニコリと笑って同意してくれる。

 うん。分かってくれて嬉しいよ。

 明仁なんかは、ハルちゃんには底抜けに甘くて優しいけど、叶太には厳しいしね。それを実の弟妹にだけには甘いものと取ったかどうかは分からないけど。

「でね、だから俺には、叶太の願いを叶えてやりたいって気持ちもあるんだよ?」

 ハルちゃんにはその視点はなかったらしい。

「……あ、そっか」

「明仁だって、ハルちゃんが心を込めて頼んだら、きっと期待に応えようとするだろ?」

「……うん」

 答えるまでに間があるのは、多分、ハルちゃんがお願いとかおねだりをほとんどしないからだろう。
 だけど、明仁が喜んでやってくれるイメージはちゃんとあるらしい。

 まあ、俺に関しては叶太を喜んで甘やかすと言うより、苦笑いしつつやってやるって感じだけど。でも別にそういうスタンスが嫌じゃないんだから、俺はきっとお兄ちゃん気質なんだよな。

「だから、俺にとっても一石二鳥なんだよ? 叶太は喜ぶし、俺自身も楽しいし」

 そう言って、笑いかけて、ハルちゃんの頭をなでる。

 うん。これも役得だよな。

「じゃあ、また明日の朝、ね?」

「……うん。よろしくお願いします」

 ハルちゃんは納得しているのかしていないのか、微妙な表情ながら、取りあえずOKの返事をくれた。
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